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お腹の手術なのに術後に肺炎になる危険とは


手術前の説明の際、全身麻酔の手術のあとに肺炎になる危険を説明されます。術後合併症のひとつですが、なんだか心配ですよね。

これには大きく2つの原因があります。

一つは、嘔吐した胃液を気管内に吸い込むもの、そしてもう一つは口の中で増えた雑菌を含む唾液が気管内に押し込まれたり誤嚥するものです。

どちらも肺に到達することで肺炎を来します。いずれも「誤嚥性肺炎」の一種であり、時に重症化して生命の危険にさらされることがあります。

全身麻酔では、全く意識はなく痛みもなく手術を受けられますが、その多くでは筋肉に力が入らなくなる「筋弛緩薬」を使用します。

開腹手術中には腹部の筋肉に力が入っていると、内臓が腹腔外に出てきて手術が安全にできません。

また、腹腔鏡手術では腹腔内に炭酸ガスを注入してお腹を膨らませた状態で細い筒をお腹に差し込んで鉗子やビデオスコープを挿入して手術を行います。

手術中にお腹に力が入ったり、急に動かれたりすると、繊細な手術が成り立ちません。

ですから、筋弛緩薬の使用は必須なのです。

手術が終了すると、麻酔科医は患者さんが自力で呼吸が出来る程度まで筋力が回復していることと呼びかけに反応できることを確かめて、気管内の管を抜きます(抜管)。

しかしこの段階では、麻酔から十分に醒めている状態ではありません。逆に十分に醒めている状態でのどに管が挿入されているようならば苦しくて仕方がないでしょう。

ですから、十分に麻酔から醒めていない状態では、管を抜いた直後に気持ち悪くなって胃液を吐いたとしても、ちゃんと外に吐出できずに気道内に吸い込んでしまう危険性があるのです。

麻酔医はそのリスクを下げるために、手術中に管を胃内に挿入して胃液を体外に排出する処置をしています。抜管の前には口腔内に貯留した唾液をできるだけ吸引しておきます。

手術の前には歯医者さんを受診して口の中の清掃をしてもらったり、タバコを吸う人には禁煙を指導したりしています。

喫煙者は、歯周病が多く、口の中の衛生環境が悪くなり、肺合併症のリスクが上昇するからです。

手術室では、できるだけリスクを低下させるためにいろいろな策を講じられていますし、万が一発症してもすぐに対処できるように準備がなされるのです。

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