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チューブ入り練りわさびの原料と添加物について調べてみた

お刺し身やおすしを食べるとき、わさびは独特の鼻に抜ける辛みと風味を与える欠かせない存在ですね。

もともと生臭さを和らげるだけではなく、細菌の繁殖を抑え食中毒を防ぐ目的で使用されてきたようです。

本わさびは、日本古来の品種で、手に入りにくく高価ですが、チューブ入りのわさびは家庭でも手軽に使用できて便利でしかも安価ですよね。

しかし、便利な反面、長期間風味を維持するためになにかしらの添加物が必要になるため、健康のためにお刺し身を良く食べるという人なら、特に気になるところだと思います。

ここでは、練りわさびと粉わさびの原料や添加物の種類と目的、その安全性について調べてみました。

「チューブ入り練りわさび」の原材料

本わさびが使われているという表記があると、本わさびが原料で、それに近い味わいがあるのなら、ちょっと高くてもいいかなと考え、消費者は手に取りやすいと思われます。

本わさびを主原料とした、高級感を売り物にした大手食品メーカーの代表的な2つの製品について調べました。

「ハウス料亭 生わさび」の原材料は次の通りです:

原材料:本わさび、食塩、植物油脂、でんぷん、ぶどう糖、ソルビトール、セルロース、環状オリゴ糖、ミョウバン、増粘剤(加工デンプン)、 香辛料抽出物、安定剤(キサンタンガム)
などとなっています。

また別のメーカー「エスビー本生きざみわさび」の原材料は次の通りです:

原材料:本わさび、乳糖、コーン油、食塩、西洋わさび、でん粉、ソルビット、セルロース、酸味料、香料、着色料(紅花黄、クチナシ)、増粘多糖類

どちらも本わさびが主原料です。糖類、植物油、食塩、香料、増粘剤が添加物として使われています。

お刺し身を頂くのに、「本わさび」らしいのを付けているものと思っていたら、「わさび風の食感と香りを味わえる糖質と塩と油」だったということです。

わさびなので大量に摂取することはありえないと思いますが、お刺し身好きで毎日のように口にしているのなら、ある程度知っておいたほうがよさそうです。

これらの添加物の目的と安全性にについて調べてみました。

Photo from Pixabay by Jonathan Valencia

「チューブ入り練りわさび」の添加物

ソルビトール(ソルビット)

ぶどう糖を還元してできる合成甘味料です。多量に摂取すると軟便・下痢の原因となります。

酵素によって辛味成分が分解されてしまわないように添加されているようです。

甘さは砂糖の60%程度で、菓子類や他の食品にも広く使われ、少量であれば安全性に問題ないと思われます。

セルロース

かさを増したり、粉わさびなどにはない「すり下ろした本わさび風の線維感や食感」を出すのに役立っていると推察されます。

「食物線維(不溶性)」の主成分ですが、何に由来するものか、どのような精製過程を経ているのかは分かりませんが、セルロースそのものは全くの無害です。

環状オリゴ糖(シクロデキストリン)

シクロデキストリンともいいます。ブドウ糖が6個から8個環状に並んでくっついたものです[1,2]。

外側が親水性、内側が疎水性のバケツ状の分子構造をしていて、その「内腔にさまざまな分子を包み込んだり(包接)、放出する(徐放)」ことができるといいます。

つまり、嫌な臭いを封じ込めたり、香りを閉じこめておいて徐放したり、変質を防いだり、実に様々な目的で使われる(食品会社にとって)「便利」なものです。

自然界にも存在し、おそらく安全だと思われます。

でんぷん(でん粉)

でんぷんは安全性については問題ないと思われますが、ソルビット、セルロース、オリゴ糖などを含め、炭水化物・糖類が主成分になっています。

本わさび自体が、根菜類なので驚くほどのことでもないのかも知れません。

もちろん安全性には問題なしです。

ミョウバン

硫酸アルミニウムカリウム、または硫酸アルミニウムアンモニウムのことで、ベーキングパウダーや漬物などにも使用されています[3,4]。

使用目的は、色止め、形状安定、品質安定などです。

アルミニウムを含むため、以前はアルツハイマー病のリスクを指摘されていましたが、現在では因果関係は否定的のようです。

「人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量(暫定耐容週間摂取量)として、体重1kg 一週間当たり 2mg」という値を設定しています。

厚労省はホームページで:アルミニウムの摂取量の平均値はすべての年代層で許容量を下回っており、過度に注意が必要なものではありません。過度な偏食に注意し、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。」としています。

少量しか使わないようなものであれば大きな問題はないと思われますが、毎日多量に使用するような場合の安全性については分かりません。

厚労省は、食品添加物使用基準に「みそに使用してはならない」と規定している[5]のは、みそ汁のように毎日摂取する量が多ければ、「暫定耐容週間摂取量」を超える恐れがある、との理由だろうと推測されます。

増粘剤(加工デンプン)

チューブから押し出しやすくするような粘性を与える「糊」です。

デンプンそのものは問題ないと思われますが、これを化学的に修飾したり、性質を変化させた加工デンプンの安全性に関しては、十分には分かっていません。

香辛料抽出物

推測ですが、損なわれた風味を補ったり、加工品の不快な臭いをマスクする効果を期待してのものでしょう。

香辛料とは何なのか全く不明ですが、私がメーカー側だとすれば、消費者に喜んで買って頂くために、本わさびを加工することで失われる風味や辛味を何とか補いたいと考えると思います。

例えば、西洋わさびなどの辛味香料を加えるということはありかなと思いますが、詳細については記述されていないのでわかりません。

香料とか香辛料抽出物とだけ表記すればいいというのが問題ですかね。

安定剤(キサンタンガム)

配合された添加物などが分離したりしないように安定化させ、粘りを保つ働きがあります。キサントモナスという菌の培養液から抽出された多糖類です。

比較的安全と考えられていて、ケチャップやドレッシングなどの調味料、プリン、ゼリーなど広く用いられています。

着色料(紅花黄、クチナシ)

着色料に関しては、次の粉わさびの記事で説明しますのでご参照下さい。

西洋わさび (Image from photo AC by HiC

「粉わさび」の原料と添加物

大手メーカーの粉わさびの原料はいずれも以下の通りです:

西洋わさび(中国産)、着色料(紅花黄、クチナシ)

西洋わさび

主原料の西洋わさびは「山わさび」や「レフォール」とも呼ばれ、畑で栽培されます。

英語名は「ホースラディッシュ(horseradish)」で、ツーンと鼻に抜ける辛さの原因はアリルイソチオシアネートであり、本わさびと同様です。

多くは中国産ですが、日本で栽培されているのは北海道産がほとんどです。

湧水豊富なわさび田で栽培される本わさびと異なり、栽培が容易で、安価なため、粉わさびやチューブ入り練りわさびの主原料として使用されています。

実は、私たちが普段口にする安価な練りわさびの多くは、これが原料と考えて間違いありません。

だからといって、これがニセモノと非難する必要ないと思います。

わさびに期待されている、素材の味を引き立たせる、「薬味」としてとしての役割はちゃんと果たしているからです。

ローストビーフの付け合わせとして目にすることも多いと思いますが、刺し身に使用する場合、色が白く本わさびの感じがないため、以下の着色料が添加されていると思われます。

紅花黄

キク科の植物である紅花(ベニバナ)由来の色素です。赤色系と黄色系があり、紅花黄は、後に示した「クチナシ青色素」と混ぜることで緑色になります。

植物由来なら大丈夫だと考える方も少なくないと思いますが、食品添加物の基礎知識には「紅花の水抽出物には遺伝毒性が、クロロホルム抽出物には細胞毒性があり」「雄のマウスでは生殖器官に異常」などど書かれています。

広く菓子類、めん類、飲み物などに使われている着色料であり、ねりわさび程度なら大きな問題はないかも知れませんが、ほかの食品でも見かけたら注意が必要です。

くちなし(クチナシ)

着色料としてのクチナシは、アカネ科の植物「くちなし」の果実由来のもので、昔から栗きんとんの着色に使われている天然の色素が主成分です。

実は天然由来のクチナシ黄色素のほかに、「クチナシ青色素」、「クチナシ赤色素」というものがあります。いずれも種々のタンパク質分解産物やアミノ酸を反応させた混合物です[6, 7]。

クチナシがわさび製品に使用されている場合、紅花由来の黄色にクチナシ青色素を加えてわさびらしい色合いを作り出しているものと思われます

立派な合成着色料ながら、単に「着色料(クチナシ)」と表記すればよいそうです。消費者は、きっと天然由来の色素と思ってしまいますね。

あまりに緑がどぎつい製品は、この着色料の量が多いものと考えて間違いないと思われます。

実際、粉わさびを水で溶いて練ってみると、上品な色合いでツーンとくる香りと味わいがあり、チューブ入りのわさびにはない「わさび感」が味わえます。

粉わさびは、等量の水で溶くだけですから、比較的簡単に準備できます。

また、粉わさびには本わさびの様な食感はありませんが、わさびの風味を味わいながら、添加物が少ないところは、個人的には練りわさびよりも安心感があると思います。

つじ丸

以上、チューブ入り練りわさびと粉わさびの原料と添加物について述べました。

一般には多量に摂るものでもありませんので、健康に重大な影響を及ぼすことは考えにくくあまり気にする必要はないとは思いますが、お刺し身好きで毎日わさびを口にしている人は頭に入れておきましょう。

また、自分自身は、イワシ、アジ、サバなどの青魚の薬味としては、特有の臭みを消してくれる「おろししょうが」で食べるのが好きです。

そのほかにも、みょうがやしその葉などもありますし、醤油の代わりにポン酢や塩で食べるというのもありです。

わさびにこだわらずに色んな薬味を試してみるのもいいですね。

本わさび (Image from photo AC by acworks

本わさび

最後に、本わさびを使用した感想です。

本わさびを実際に手に入れて実際に自分ですり下ろしてみました。

想像したものより辛さはマイルドで、性状は水っぽい感じです。

下ろし方が悪かったのか収穫時期がよくなかったのか、期待したほどのツーンとくる感じはなかったのですが、安心感はあります。

しかし、ラップに包んで冷蔵庫で保管するものの時間が経過すると黒ずんできます。特に茎や葉のほうの黒ずみが強くなり、大丈夫かと少し心配になります。

ですから、本わさびは、すり下ろす手間が必要なこと、傷まないように管理しながら、短期間で使い切ること、高価なことが難点です。

やはり、家庭での便利さを優先すると「チューブ入り練りわさび」か「粉わさび」になってしまいますね。

ここでは詳しく触れていませんが、チューブ入りのおろししょうがやおろしニンニク等も、同じような添加物が入っています。

安全だろうと思われるものだけではなく、大丈夫だと言い切れないものも少量ながら入っているのは事実です。

私たちは、この種の製品を使用することで、便利さ、価格、保存性などと引き換えに、本来ならば不要である添加物を摂取していることを十分認識した上で、上手に使うべきだろうと思います。

つじ丸

まとめ

  1. 自宅で使うのは面倒で高価な本わさびとくらべて、チューブ入り練りわさびは、簡単、安価に、わさびらしい風味と食感でお刺し身を食べるのにとても便利な製品。
  2. ただし、中身は本わさび入りの「わさび風の食感と香りを味わえる糖質と塩と油」だということを心得ておく。
  3. 商品の変質と腐敗を防ぐため、添加物がいろいろ入っているが、大量に摂取する類のものではないので、過剰な心配はいらないと思われる。
  4. 手軽さと風味と安心感を求める方には、粉わさびはおすすめ。ほかに、手に入りやすいショウガやミョウガなどを使うのもいい。
  5. チューブ入り調味料などこの種の製品では、便利さや価格と引き換えに、種々の添加物を摂取していることは認識して使用するべき。

《参考文献》

1.製品情報,食品添加物 〝シクロデキストリン〟, 関東化学株式会社. (参照 2021-02-02)

2.製品情報 〝イラストで分かるシクロデキストリン〟, 株式会社シクロケムバイオ. 参照 2021-02-02)

3.小薮浩二郎 (監修) . 食品添加物用語の基礎知識. マガジンランド. 2016年. 272p. ISBN-13: 978-4865460971

4.食品添加物〝食品中のアルミニウムに関する情報〟, 厚生労働省(参照 2021-02-02)

5.食品添加物〝食品添加物の安全性に関するリスクプロファイルシート(アルミニウム)〟, 厚生労働省.2013年6月(参照 2021-02-02)

6.食品衛生の窓. 〝用途別主な食品添加物. 2 着色料〟, 東京都福祉保険局. (参照 2021-02-02)

7.天然色素一覧. 〝クチナシ青色素〟, キリヤ化学. (参照 2021-02-02)

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